徒然

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家族の形(2)-同性婚(日本編)-

前回の続きです。今回は日本の同性婚について話していきたいと思います。

同性婚の動き
  2000年代後半から、同性カップルが結婚式をあげる(日本の婚姻は婚姻届を受理したことによって成立するので、儀式は形だけで何の効果もない)カップルが報道されるようになってきました。もともと同性愛を禁止する法律がなかった日本は、いわば隠れた存在として同性カップルを扱ってきました。
   2015年、渋谷区が日本で初めて、婚姻関係と同じと言えるような同性カップルに対して、証明書を発行するようになりました。これをきっかけに、同様のシステムを導入する自治体が増え、市町村単位で広がっていきました。現在では、20ほどの自治体が導入し、他の多くの自治体が導入を検討しています。
   企業でも、婚姻したものに与えていた利益を同性カップルも受けられるように仕組みを整えるところが増えてきました。野村證券ソニーはかなり進んでいると聞きます。
   そして、2019年2月、同性婚を求める人たちが一斉に全国で訴訟を提起しました。また、国会議員の中でも当事者が中心となって研究会などが開かれているようです。加えて、国連で性的指向性自認に関する声明が出された際、日本は賛同をしています。

 


同性パートナーシップとは何か
    2015年の渋谷区をきっかけに広がった同性パートナーシップについて、当事者の間でも(一部ですが)、世間一般にも婚姻が認められているとの間違いが広がっています。この同性パートナーシップを法律的にどんなものかを説明するものは、法律の専門誌を除けばあまり見当たらず、世間一般の方、当事者の方には厳しい状況にあるため、一度解説したいと思います。
    この同性パートナーシップは法的には一切なんの効果もないものです。通常婚姻が成立すれば、権利や気味を得ますが、そういったことは一切ありません。このパートナーシップは、カップルの結びつきが一定以上に強いということを示すにとどまっています。
   しかし、なんの進展もないわけではありません。民間の企業や病院などが婚姻をしているものに限っていた自主規制を同性パートナーシップの証明書を持つものにも認めるように動いています。一部の企業では、従業員の配偶者控除を同性パートナーシップ証明書をもつ者にも広げています。そのため、法律上は単なる事実関係の証明書でしかありませんが、民間での効果は一定程度あると言えるでしょう。
    近年まで宗教上の理由で同性婚を認めてこなかったイタリアでも、国が認めないからということで地方自治体レベルで日本同様の仕組みがありました。EUに加盟しているという事情がありますが、次第に国に広がったので、何の意味もない仕組みと悲観する必要はないでしょう。

 


同性婚は禁止されているのか

 


憲法の話
  よく同性婚の議論がされる際、禁止されているというような言葉が上がったりします。よく憲法を理由にされますが、それは正しいのでしょうか。一度説明したいと思います。
   憲法24条は婚姻の権利と両性平等を定めています。婚姻の権利の際に、「両性の合意に基づき」という文言があり、案の段階では「both sexes」になっていました。だから、同性である同性婚は認められないと言われています。
   実際に同性パートナーが婚姻届を提出すると、受理を拒否されますが、その理由として憲法24条があげられることがありました(現在では憲法を理由にというのは無くなっています)。しかし、明文で同性婚を禁止するとは書かれていないので、グレーゾーンと言えるでしょう。
    最近の学説では、この「両性の」という部分は「当事者の」と読み替えができるというものがあります。日本国憲法ができたのは、戦後間もない頃です。その当時、同性愛は世界でもタブー視されており、同性婚などもってのほかの状況でした。だから、「両性の」と記すことは当然と言えるでしょう。しかし、2000年代に入り、人権の観点から同性婚を認める動きが活発化したので、憲法が想定していなかったが、新しい価値観として同性婚憲法上禁止していないという読みかえができると言われ始めました。スペインの憲法も日本と同様の文言があったようですが、両当事者に読み替えできると考え、憲法を変えることなく同性婚を認めました。ちなみに、スペインはカトリック国です。
    憲法学者の中には文言から離れすぎているという人もいます。憲法を変え、両当事者にとした方が良いという意見です。私もこれには賛成です。上の読みかえも可能だとは思いますが、書き換えた方がより良いと考えられると思います。

 


民法の話
   民法で婚姻の効果を定めている条文は、全て主語が夫婦になっています。このことから同性婚は厳しいという意見もあります。確かに夫婦という言葉はどれだけうまく読み替えても、1組の男女の結合体としか読めない気がします。
   民法も元々は明治にできたものです。日本国憲法ができた際に大きく改正は行われ、そのあとも現代化をされてきましたが、基礎は明治にできました。そんな昔に当然同性婚という概念はないですから、両当事者との読み替えもできなくはないと思います。しかし、憲法の文言よりも明白に1組の男女の結合体を表す言葉が使われている以上、民法の改正が必要になっています。

 


・第三の形の可能性
  前回紹介したように、婚姻ではなく、パートナーシップ制度(日本のものとは異なります)から発展していきました。そのため、日本でもパートナーシップ制度を導入すれば同性婚ができるようになるのではないかと考えます。
   婚姻類似の形になるので、憲法がどれだけ影響を与えるのか難しいところではありますが、読み替えが可能であるところなので、パートナーシップならば法律単位で成立が可能なのではないかと考えます。すでに日本では土台があるので、法律的な効果(相続や親権など)を付与して仕組みを整えるハードルは低いと予想しています。

 


外国で同性婚をしてきた場合
  よく外国では認められているんだから、外国でしてきたらいいじゃないと言われることがあるかと思います。この点について正しい理解をされている方は少ないかと思います。そこで、説明していきたいと思います。
   外国でした婚姻が日本でも絶対に認められるわけではありません。これは同性婚だけでなく異性婚も同様です。外国の婚姻を認めるかという基準が法律にあり、それに合わないと認められません。同性婚をした場合、基準の中に公序というものがあり、公序良俗に反するものは認められないとなっています。例えば、離婚を認めないものや、女性差別的な婚姻の仕組みがあるものは認められない傾向があります。
   日本では同性婚が成立していないので、この公序の基準で認められないのではと考えます。しかし、実際に海外で同性婚をして帰ってきた日本人が裁判をした例がないので、裁判所がどのような判断をするのか難しいところです。
   私の指導教官はこの分野のエキスパートなのですが、上記の国連の声明に賛同しているから公序で認めないっていうことはないのではないかとおっしゃってました。もしかしたら、何らかの形で認められることもあるかもしれません。

 


同性カップルにできること
  では、相続をパートナーにしてほしい、法律の効果を得たいという同性カップルはどうすればいいのでしょうか。
   一般的に、養子縁組が使われています。文字から分かるように養子縁組は親子関係を作出するものです。日本の養子縁組は届出で成立するので、成立の可能性が大きいです。しかし、養子縁組をしたもの同士の結婚を禁じています。これは根拠のない、倫理的な規定です。同性婚が成立した場合、養子縁組をしていたカップルには認められない可能性があります。
   この点について、海外では例外的に婚姻を認めたことがあったようです。なので、日本でも同様の形が可能なのではないかと思います。また、仮に認められなくても全国各地で訴訟されることが予想されるため、なんらかの形での結論が出ると考えています。
   また、相続であれば、遺言ということもあり得ます。私はあまり専門ではないのでわからないですが、可能でしょう。

 


おわりに
  この分野は論文が何本もかけるほどの分野です。今回はわかりやすさを重視して、難しい法律論は一切さけています。そのため、さらっと概観するにとどまっています。また、変化のスピードが早い分野でもあるので、今後も更新していこうと思っています。
    何か質問があれば、ツイッターを知ってる方はツイッターやコメント欄で随時受けています。
   読んでいただきありがとうございました。